FXのアルゴリズムトレードは、あらかじめ設定したルールに基づいてコンピュータが自動的に取引を行うシステムです。感情に左右されず、24時間稼働し続けるこの取引方法は、近年多くのトレーダーから注目を集めています。「いちいち相場をチェックする時間がない」「感情的になって損をしてしまう」といった悩みを抱える方にとって、アルゴリズムトレードは大きな助けになるでしょう。
この記事では、FXのアルゴリズムトレードの基本から始め方、成功のコツまで、初心者の方にもわかりやすく解説します。プログラミングの知識がなくても始められる方法も紹介するので、ぜひ最後までお読みください。
FXのアルゴリズムトレードとは
アルゴリズムトレードとは、あらかじめ決めた取引ルールをプログラム化し、コンピュータに自動で売買を行わせる取引手法です。「システムトレード」や「自動売買」とも呼ばれています。人間の代わりにコンピュータが相場を監視し、条件が整った瞬間に自動で注文を出してくれます。
アルゴリズムトレードの基本概念
アルゴリズムトレードの核心は「if then」という条件分岐にあります。例えば「もし米ドル/円が110円を超えたら、1万通貨を買う」というシンプルなルールから、複数の指標を組み合わせた複雑なものまで、様々な戦略を自動化できます。
テクニカル指標(移動平均線、RSI、MACDなど)を使った売買シグナルや、経済指標の発表に合わせた取引など、人間が行うトレード判断のほとんどをプログラムに落とし込むことが可能です。
人間の感情に左右されない取引の魅力
FX取引で最も厄介なのは「感情」です。利益が出ると欲が出て利確が遅れたり、損失が出ると恐怖から早々に損切りしてしまったり。こうした感情の波に翻弄されることなく、冷静に取引できるのがアルゴリズムトレードの大きな魅力です。
相場が荒れている時こそ、感情を排除した機械的な判断が威力を発揮します。「もう少し待てば戻るかも」という希望的観測や、「このまま下がり続けるかも」という不安に左右されることなく、決めたルール通りに淡々と取引を続けられます。
従来の手動トレードとの違い
手動トレードとアルゴリズムトレードの違いは、単に「自動か手動か」だけではありません。両者には以下のような特徴の違いがあります。
特徴 | 手動トレード | アルゴリズムトレード |
---|---|---|
判断基準 | 経験や直感も含む | 明確なルールのみ |
取引時間 | トレーダーが活動している時間のみ | 24時間365日可能 |
同時監視 | 限られた通貨ペア | 複数通貨ペアを同時監視 |
感情の影響 | 大きい | ほぼなし |
取引速度 | 人間の反応速度に依存 | ミリ秒単位で反応可能 |
手動トレードでは経験に基づく「匠の技」が活かせる一方、アルゴリズムトレードではデータに基づく「再現性のある戦略」が強みになります。
アルゴリズムトレードの仕組み
アルゴリズムトレードは、どのように動作しているのでしょうか。基本的な仕組みを理解することで、より効果的に活用できるようになります。
取引ルールをプログラム化する方法
アルゴリズムトレードの第一歩は、自分の取引ルールを明確にすることです。「どんな条件で買うのか」「どんな条件で売るのか」「どのくらいの利益が出たら決済するのか」「どの程度の損失なら許容するのか」といった点を具体的に決めます。
例えば、以下のようなシンプルなルールを考えてみましょう。
- 5日移動平均線が20日移動平均線を上抜けたら買い
- 5日移動平均線が20日移動平均線を下抜けたら売り
- 利益が30pips出たら決済
- 損失が15pipsを超えたら損切り
こうしたルールをプログラミング言語(Python、MQL4/5など)で記述するか、専用のツールを使ってプログラム化します。プログラミングの知識がない方は、後述する初心者向けのツールを利用するとよいでしょう。
バックテストの重要性
ルールを決めたら、過去のデータでその戦略がどれだけ有効だったかを検証します。これを「バックテスト」と呼びます。例えば、過去5年間の為替データで自分の戦略を試し、どれくらいの利益や損失が出たかを確認します。
バックテストでは以下の点をチェックします。
- 総利益と総損失のバランス
- 最大ドローダウン(最大の資金の落ち込み)
- 勝率と平均利益/平均損失の比率
- 連続して負ける回数の最大値
良好な結果が出たとしても、過去のデータだけで将来の相場を完全に予測することはできません。しかし、明らかに機能しない戦略を排除し、有望な戦略を見つけるための重要なステップです。
リアルタイムデータの活用法
実際に運用する際は、リアルタイムの市場データを取得し、それに基づいて判断を下します。FX業者やデータプロバイダーからのデータフィードを受け取り、プログラムがそのデータを分析して売買シグナルを生成します。
リアルタイムデータを活用する際の注意点として、「スリッページ」があります。これは注文を出した時点の価格と、実際に約定した価格との差のことです。特に相場が急変する場面では大きなスリッページが発生することがあるため、バックテストだけでは見えてこない実運用上の課題として認識しておく必要があります。
FXアルゴリズムトレードの種類
アルゴリズムトレードには様々な種類があり、相場環境や自分の投資スタイルに合わせて選ぶことが大切です。主な種類を見ていきましょう。
トレンドフォロー型
トレンドフォロー型は、相場の流れに乗って利益を得る戦略です。「トレンドは友達」という格言通り、上昇トレンドなら買い、下降トレンドなら売りのポジションを取ります。
具体的には、移動平均線のゴールデンクロス・デッドクロスや、一定期間の高値・安値のブレイクアウトなどをシグナルとして利用します。トレンドが続く限り大きな利益を狙えますが、レンジ相場では頻繁に偽シグナルが出て損失が積み重なることもあります。
トレンドフォロー型は比較的シンプルなロジックで構築できるため、初心者にもおすすめの戦略です。ただし、トレンドの判定方法や、エントリー・イグジットのタイミングなど、細部の調整が重要になります。
レンジ相場対応型
レンジ相場対応型は、相場が一定の範囲内で上下動している時に効果を発揮します。上限に近づいたら売り、下限に近づいたら買いのポジションを取る戦略です。
RSIやストキャスティクスなどのオシレーター系指標を活用し、「買われすぎ」「売られすぎ」の状態を判断します。例えば「RSIが70以上なら売り、30以下なら買い」といったルールを設定します。
レンジ相場では安定した利益を出せますが、突然トレンドが発生すると大きな損失を被るリスクがあります。このため、トレンド発生の兆候を察知する仕組みや、損失を限定するための厳格な損切りルールを組み込むことが重要です。
裁定取引(アービトラージ)型
裁定取引は、同じ通貨ペアの価格差を利用して利益を得る戦略です。例えば、A社ではドル円が110.00円、B社では110.05円で取引されている場合、A社で買ってB社で売ることで0.05円の利益を確定させます。
この戦略は市場の非効率性を利用するため、理論上はリスクが低いとされています。しかし、実際には約定タイミングのずれやスプレッドなどのコストがあるため、高速な取引システムと低コストの取引環境が必要です。
個人トレーダーが純粋な裁定取引で利益を上げるのは難しくなっていますが、類似した考え方を応用した戦略(例:相関の高い通貨ペア間の一時的な乖離を利用するなど)は依然として有効です。
スキャルピング型
スキャルピングは、ごく短時間の小さな値動きから少額の利益を積み重ねる戦略です。数秒から数分の間に取引を完結させ、1回あたり数pipsの利益を狙います。
ティックチャートや1分足チャートを使用し、ボリンジャーバンドやMACDなどの指標を組み合わせて、わずかな価格変動のチャンスを捉えます。取引回数が非常に多いため、取引コスト(スプレッド)の低い通貨ペアや業者を選ぶことが重要です。
スキャルピング型のアルゴリズムトレードは、高速な処理能力と安定した接続環境が必須です。また、多くのFX業者ではスキャルピングに制限を設けていることがあるため、利用する前に取引条件を確認しましょう。
アルゴリズムトレードのメリット
アルゴリズムトレードには多くのメリットがあります。これらを理解することで、自分のトレードスタイルに取り入れるべきかどうかの判断材料になるでしょう。
24時間休まず取引可能
FX市場は平日なら24時間動いていますが、人間には睡眠や仕事、プライベートの時間が必要です。アルゴリズムトレードなら、トレーダーが寝ている間や仕事中でも自動的に取引を続けてくれます。
特に日本時間の深夜に動きの激しい欧米市場の取引や、早朝に発表される重要な経済指標への対応も可能になります。時差を気にせず、最適なタイミングで取引できるのは大きな利点です。
また、常に相場を監視しているストレスから解放されるため、精神的な余裕も生まれます。「今エントリーすべきか」「このポジションをいつ決済すべきか」と常に考える必要がなくなり、他の活動に時間を使えるようになります。
感情に左右されない冷静な判断
人間は感情の生き物です。利益が出ると「もっと欲しい」と欲が出たり、損失が出ると「怖い」と感じたりします。これらの感情が原因で、本来のトレードプランから外れた判断をしてしまうことがよくあります。
アルゴリズムトレードでは、あらかじめ設定したルール通りに機械的に取引が行われるため、感情の影響を受けません。「もう少し待てば戻るかも」という根拠のない期待や、「このまま下がり続けるかも」という不安に左右されることなく、一貫した取引が可能です。
特に大きな損失を抱えた時や、連続して負けが続いた時など、感情的になりやすい場面でこそ、アルゴリズムトレードの冷静さが活きてきます。
複数通貨ペアの同時監視
人間の目で監視できる通貨ペアの数には限りがあります。一般的に2〜3ペア程度が限界でしょう。しかし、アルゴリズムトレードなら10ペア、20ペアといった多数の通貨ペアを同時に監視し、チャンスがあればすぐに取引できます。
複数の通貨ペアに分散投資することで、特定の通貨ペアの不調による影響を抑えることができます。例えば、ドル円が動きの少ないレンジ相場でも、ユーロドルやポンド円などで活発な動きがあれば、そちらで利益を狙うことが可能です。
また、通貨ペア間の相関関係を利用した複雑な戦略も実行できます。例えば、通常は相関の高い2つの通貨ペアの値動きが一時的に乖離した場合、その修正を狙う戦略などが考えられます。
取引の高速化と効率化
人間が相場を見て、判断し、注文を出すまでには数秒から数十秒かかります。一方、アルゴリズムトレードではミリ秒単位での反応が可能です。
この高速性は、特に重要な経済指標の発表時や急激な相場変動時に威力を発揮します。例えば、米国の雇用統計発表直後は数秒で大きく価格が動くことがありますが、アルゴリズムトレードならその瞬間を逃さず取引できます。
また、複雑な計算も瞬時に行えるため、多数の指標を組み合わせた高度な分析に基づく取引も可能になります。人間なら時間のかかる計算も、コンピュータなら一瞬で処理できます。
アルゴリズムトレードのデメリット
メリットがある一方で、アルゴリズムトレードにはいくつかの注意点やデメリットもあります。これらを理解した上で利用することが大切です。
システム障害のリスク
アルゴリズムトレードは、コンピュータやインターネット接続に依存しています。そのため、停電やネットワーク障害、サーバーダウンなどのトラブルが発生すると、取引が中断してしまう可能性があります。
特に重要な経済指標の発表時などは、FX業者のサーバーに負荷がかかりやすく、注文が遅延したり約定しなかったりするケースもあります。また、自宅のインターネット回線が不安定な場合も、取引の信頼性に影響します。
これらのリスクを軽減するためには、バックアップ電源の確保や複数のインターネット接続手段の用意、さらには複数のFX業者を利用するなどの対策が考えられます。また、緊急時に手動で介入できる体制を整えておくことも重要です。
相場急変時の対応限界
アルゴリズムトレードは、プログラムされたルールに従って動作します。しかし、予期せぬ政治イベントや自然災害、金融危機などによって相場が急変した場合、通常のルールでは対応できないことがあります。
例えば、2015年に起きたスイスフラン・ショックのような突発的な大暴騰・大暴落時には、多くのアルゴリズムが想定外の損失を被りました。こうした「ブラックスワン」と呼ばれる稀有な事象に対しては、人間の判断による介入が必要になることもあります。
このリスクに対処するには、極端な相場変動時に自動的に取引を停止する機能や、ポジションサイズを制限するリスク管理機能を組み込むことが有効です。また、定期的にアルゴリズムの動作を確認し、必要に応じて調整することも大切です。
開発・維持コストの問題
高度なアルゴリズムトレードシステムを開発するには、プログラミングスキルや金融知識、統計学の理解などが必要です。これらのスキルを習得するには時間がかかりますし、外部に開発を依頼する場合は費用もかかります。
また、一度開発したシステムも、相場環境の変化に合わせて定期的にメンテナンスや改良が必要です。市場の特性は常に変化しているため、以前は有効だった戦略が徐々に効果を失うこともあります。
初心者の場合は、既存のツールやサービスを利用することで、このコストを抑えることができます。また、シンプルな戦略から始めて、徐々に複雑化していくアプローチも有効です。
過度な最適化の落とし穴
バックテストで良い結果を出すために、特定の期間のデータに過度に適合させてしまう「オーバーフィッティング」の問題があります。過去のデータに完璧に合わせたアルゴリズムは、未来の相場では全く機能しないことがよくあります。
例えば、「2020年1月から6月までのドル円相場で最も利益が出るパラメータ」を探し出したとしても、そのパラメータが2020年7月以降も有効である保証はありません。過去の特定のパターンに過剰に適応しすぎると、汎用性が失われてしまいます。
この問題を避けるには、テスト期間を複数に分けて検証したり、異なる通貨ペアでも同様の結果が得られるか確認したりすることが重要です。また、パラメータの数を必要最小限に抑え、シンプルなロジックを心がけることも有効です。
初心者向けアルゴリズムトレードの始め方
プログラミングの知識がなくても、アルゴリズムトレードを始めることは可能です。初心者に適した方法をいくつか紹介します。
無料で使えるツール3選
プログラミングの知識がなくても使えるアルゴリズムトレードのツールがいくつかあります。代表的なものを紹介します。
ツール名 | 特徴 | 対応業者 |
---|---|---|
MT4/MT5 | 世界中で最も普及しているプラットフォーム。無料のEA(自動売買プログラム)も多数 | 多くの海外FX業者 |
cTrader | 直感的なインターフェースで使いやすい。自動売買機能も充実 | XMなど一部の業者 |
TradingView | チャート分析に優れ、Pine Scriptという比較的簡単な言語で戦略を作成可能 | 一部の業者と連携可能 |
特にMT4/MT5は、無料で使えるEA(Expert Advisor)が多数公開されているため、プログラミングなしでアルゴリズムトレードを始められます。ただし、無料のEAの中には性能が不安定なものもあるため、十分にテストしてから実際の取引に使いましょう。
少額から試せるFX業者の選び方
アルゴリズムトレードを始める際は、以下のポイントを考慮してFX業者を選ぶとよいでしょう。
- 自動売買に対する制限がないこと
- API取引に対応していること
- スプレッド(取引コスト)が狭いこと
- 最小取引単位が小さいこと(1,000通貨や100通貨から取引可能など)
- サーバーの安定性が高いこと
特に初心者の場合は、少額から取引できる業者を選ぶことで、リスクを抑えながら実践経験を積むことができます。多くの海外FX業者では、10ドル程度の少額から口座開設できるところもあります。
また、デモ口座でまず十分にテストすることも重要です。実際にお金を投入する前に、仮想資金でアルゴリズムの動作を確認しましょう。
プログラミング知識なしでも可能な方法
プログラミングの知識がなくても、以下の方法でアルゴリズムトレードを始めることができます。
- 既存のEA(自動売買プログラム)を利用する
MT4/MT5のマーケットプレイスや各種フォーラムで公開されているEAを使用する方法です。無料のものから有料のものまで様々あります。 - ビジュアルプログラミングツールを使う
ドラッグ&ドロップで戦略を組み立てられるツールもあります。例えば「EA Builder」などのサービスでは、プログラミングなしで自分だけのEAを作成できます。 - シグナルサービスを利用する
プロのトレーダーの売買シグナルを自動的にコピーするサービスもあります。MT4/MT5の「シグナル」機能や、各種のコピートレードサービスがこれに該当します。
いずれの方法も、最初は小さな資金で試し、徐々に理解を深めながら資金を増やしていくアプローチが安全です。
最初に設定すべきリスク管理のポイント
アルゴリズムトレードを始める際、最も重要なのはリスク管理です。以下のポイントを必ず設定しましょう。
- 1回の取引での最大リスク額を決める
資金の1〜2%程度に抑えるのが一般的です。例えば10万円の資金なら、1回の取引での最大損失額は1,000〜2,000円程度に設定します。 - 総リスク量の制限
同時に複数のポジションを持つ場合、全体のリスクが資金の5〜10%を超えないようにします。 - ストップロスの設定
必ず損切りラインを設定し、想定外の大きな損失を防ぎます。特に重要な経済指標発表前などは、ストップロスを厳格に管理することが重要です。 - レバレッジの調整
初心者は低めのレバレッジ(5倍〜10倍程度)から始め、経験を積んでから徐々に調整するとよいでしょう。
これらのリスク管理ルールをアルゴリズムに組み込むことで、「資金管理の失敗」という最も一般的なトレーダーの失敗を避けることができます。
成功するためのアルゴリズム設計のコツ
効果的なアルゴリズムを設計するためのコツをいくつか紹介します。これらのポイントを押さえることで、より安定した結果を得られるでしょう。
シンプルなルールから始める
アルゴリズムトレードを始める際は、複雑な戦略よりもシンプルなルールから始めることをおすすめします。例えば、2つの移動平均線のクロスだけで売買するシンプルな戦略は、理解しやすく、問題が発生した時の原因特定も容易です。
複雑な戦略は一見賢そうに見えますが、多くのパラメータを持つほど過剰最適化のリスクが高まります。また、多数の条件を組み合わせると、実際に売買シグナルが発生する頻度が極端に少なくなることもあります。
まずは「移動平均線のクロス」「RSIの買われすぎ・売られすぎ」「一定期間の高値・安値のブレイクアウト」といった基本的な戦略から始め、徐々に自分なりの工夫を加えていくとよいでしょう。
相場環境の変化に対応する工夫
相場には大きく分けて「トレンド相場」と「レンジ相場」があります。同じ戦略でも、相場環境によって効果が大きく異なることがあります。例えば、トレンドフォロー型の戦略はトレンド相場では好成績を収めますが、レンジ相場では苦戦します。
この問題に対処するには、以下のような工夫が考えられます。
- 相場環境を判断するフィルターを追加する
例えば、ADXなどの指標でトレンドの強さを測定し、トレンドが強い時だけトレンドフォロー戦略を適用するなど。 - 複数の戦略を組み合わせる
トレンド相場用とレンジ相場用の戦略を用意し、相場環境に応じて切り替える方法。 - ポジションサイズを調整する
相場環境の確信度に応じて、取引量を変える方法。確信度が高い時は大きめのポジション、低い時は小さめのポジションを取ります。
相場は常に変化するものであり、どんな優れた戦略も永遠に有効ではありません。環境の変化に適応できる柔軟性を持たせることが長期的な成功につながります。
利益確定と損切りの設定方法
アルゴリズムトレードにおいて、エントリーポイントと同じくらい重要なのが、利益確定(利確)と損切りのタイミングです。これらの設定方法によって、同じエントリー戦略でも結果が大きく変わることがあります。
利益確定の方法としては、以下のようなものがあります。
- 固定値での利確
例えば「20pips利益が出たら決済」など、一定の利益が出た時点で決済する方法。 - トレイリングストップ
利益が出るにつれて損切りラインを追随させ、相場が反転した時点で決済する方法。大きなトレンドに乗れた時に大きな利益を狙えます。 - 反対シグナルでの決済
エントリーと反対のシグナルが出た時に決済する方法。例えば、買いエントリーした後に売りシグナルが出たら決済します。
損切りについても同様に、固定値での損切りや、サポート・レジスタンスラインを利用した損切りなど、様々な方法があります。重要なのは、必ず損切りルールを設定し、守ることです。
継続的な改良の重要性
アルゴリズムトレードは「作って終わり」ではなく、継続的な改良が必要です。定期的にパフォーマンスを検証し、問題点があれば修正していくことが大切です。
改良のポイントとしては、以下のようなものがあります。
- 勝率と損益比率のバランス
勝率が低くても1回あたりの利益が大きければ、全体としてはプラスになることもあります。逆に、勝率が高くても1回の損失が大きすぎると、長期的には負けてしまいます。 - ドローダウン(最大の資金の落ち込み)の管理
連続して負ける期間をどう乗り切るかも重要です。最大ドローダウンを許容範囲内に抑える工夫が必要です。 - 取引コストの考慮
スプレッドやスワップポイントなどの取引コストも考慮に入れて、実際の収益性を評価します。
改良の際は、一度に大きく変更するのではなく、小さな変更を一つずつ加えて効果を確認していくことをおすすめします。
注意すべき落とし穴
アルゴリズムトレードには、初心者がよく陥る落とし穴がいくつかあります。これらを事前に知っておくことで、失敗を回避できるでしょう。
バックテストと実運用の乖離
バックテストで素晴らしい結果が出ても、実際の運用では全く違う結果になることがよくあります。この乖離の主な原因は以下の通りです。
- スリッページの影響
バックテストでは理想的な約定を想定していますが、実際の取引ではスリッページ(注文価格と約定価格のずれ)が発生します。 - 取引コストの違い
スプレッドやスワップポイントの変動、取引手数料などが実際の収益に影響します。 - データの精度の問題
バックテストに使用するヒストリカルデータの精度や粒度が、実際の相場と異なることがあります。
これらの問題に対処するには、バックテスト時にスリッページや取引コストを現実的に見積もることや、デモ取引で十分に検証してから実運用に移行することが重要です。
過剰最適化(オーバーフィッティング)の問題
過去のデータに過度に適合させた戦略は、未来の相場では機能しないことが多いです。これを「オーバーフィッティング」と呼びます。
例えば、10個のパラメータを持つ戦略で、それぞれのパラメータを10通りずつ試すと、10の10乗(100億通り)もの組み合わせができます。これだけ多くの組み合わせの中から「最も良い結果」を選ぶと、それは単に偶然良かっただけの可能性が高いのです。
この問題を避けるためには、以下のような対策が有効です。
- パラメータの数を最小限に抑える
シンプルな戦略ほど汎用性が高い傾向があります。 - アウトオブサンプルテストを行う
データの一部を戦略の最適化に使い、残りのデータでその戦略を検証します。 - 複数の通貨ペアや時間枠でテストする
様々な条件下で安定した結果が出る戦略が理想的です。
過剰最適化を避けるためには、「理にかなった戦略」を心がけることも大切です。相場の理論的な背景や、なぜその戦略が機能するはずなのかを理解することで、より堅実な戦略を構築できます。
レバレッジ設定の注意点
FXの大きな特徴の一つがレバレッジです。適切に使えば少ない資金でも大きなリターンを狙えますが、使い方を誤ると資金を短期間で失うリスクもあります。
特にアルゴリズムトレードでは、自動で取引が行われるため、レバレッジの設定には細心の注意が必要です。以下のポイントを押さえましょう。
- 初心者は低めのレバレッジから始める
経験が浅いうちは、5倍〜10倍程度の低いレバレッジ設定がおすすめです。 - 資金に対する適切なポジションサイズを設定する
例えば、10万円の資金で最大リスクを2%とすると、1回の取引での最大損失額は2,000円に抑えるべきです。 - 複数ポジションの総リスクを管理する
同時に複数のポジションを持つ場合、全体のリスクが過大にならないよう注意します。
レバレッジは「諸刃の剣」です。利益を拡大する可能性と同時に、損失も拡大させる点を常に意識しておきましょう。
完全自動化への過信
アルゴリズムトレードは便利ですが、「設定したら放置」という姿勢は危険です。市場環境は常に変化しており、以前は有効だった戦略が突然機能しなくなることもあります。
また、システムエラーやネットワーク障害、予期せぬ相場急変など、様々なトラブルが発生する可能性もあります。これらに対処するためには、定期的な監視と人間の判断による介入が必要です。
具体的には、以下のような対策が考えられます。
- 定期的なパフォーマンス確認
毎日または毎週、システムの動作状況と収益状況を確認します。 - 異常検知の仕組みを導入する
通常と大きく異なる動作をした場合にアラートを出す仕組みを設けます。 - 緊急時の手動介入手順を用意する
システムに問題が発生した場合の対応手順を事前に決めておきます。
完全な「お任せ」ではなく、人間とアルゴリズムの協調関係を築くことが、長期的な成功につながります。
まとめ:FXアルゴリズムトレードを賢く活用するために
FXのアルゴリズムトレードは、感情に左右されない冷静な取引や24時間の市場監視など、多くのメリットがあります。初心者でも専用ツールを使えば、プログラミング知識がなくても始められます。ただし、システム障害のリスクや過剰最適化の落とし穴など、注意点も理解しておく必要があります。成功の鍵は、シンプルなルールから始め、リスク管理を徹底し、継続的に改良していくことです。アルゴリズムに全てを任せるのではなく、人間の判断も適切に組み合わせながら、自分に合ったトレードスタイルを見つけていきましょう。
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