世の中には「知っていれば得をすること」「知らないと損をすること」が数多くあります。しかし、厄介なことに、知らない人は損していることすら気づかないままです。これは、お金に関する知識も例外ではありません。情報が不足している人は、気づかぬうちに「カモ」にされ、必要以上にお金を失っているのです。
「お金の知識」は専門家のみが習得していればよいものではなく全ての人が学ぶべきものです。本記事では、特に重要な社会保険と投資の知識、住宅ローンや教育費などライフステージごとのポイント、そして正しい資産形成の秘訣についてお伝えします。
情報弱者にならないために知っておくべきこと
まず、誰もが知っておくべきお金の知識として挙げられるのが「社会保険」と「投資」です。社会保険の制度を理解していれば、必要以上の民間保険に加入しなくても済みますし、資産を守りながら着実に増やしていくことが可能になります。
例えば、多くの人が「子供の学費」を準備するために学資保険を検討しますが、実際にはあまりおすすめされていません。学資保険は安全に見えますが、利回りが低く、インフレにも対応しにくいためです。その代わり、投資信託や積立NISAを活用すれば、より効率的に教育資金を準備することができます。
また、住宅ローンについても誤った選択をしがちです。「変動金利と固定金利のどちらが良いのか」という問いに対して答えは難しいですが「条件付きで変動金利が有利」と考えます。しかし、金利選択は個人の状況やリスク許容度によって異なるため、しっかりと理解した上で判断することが重要です。
20代に必要なお金の知識
20代は「将来への投資」に最も適した時期です。この投資には2つの側面があります。一つは「資産形成のための投資」、もう一つは「自己投資」です。
資産形成については、積立NISAやiDeCoなどの制度を活用し、早いうちから少額でも積立投資を始めることがポイントです。例えば、毎月1万円を40年間積み立てた場合、複利効果によって資産が2000万円を超える可能性もあります。これは、長期・分散・積立という投資の基本を守れば、誰でも実現できる成果です。
もう一つの「自己投資」は、稼ぐ力を高めるための重要な手段です。資格取得やスキルアップ、ビジネスに関する学びを深めることで、将来的な収入アップが期待できます。20代のうちに自己投資をしっかり行い、稼ぐ力を高めることは、資産形成の土台を築く上で欠かせません。
60代に必要なお金の知識
60代では、リタイア後の生活に備えた「出口戦略」が重要になります。資産をどのように取り崩すか、どのタイミングで年金を受け取るか、といった判断が老後の生活を大きく左右するからです。
公的年金は、65歳から受け取るのが一般的ですが、60歳で早めに受け取り始めると、受給額が24%減額されます。一方で、75歳まで受給を繰り下げると、なんと84%も増額されるのです。長生きするリスクを考えると、できるだけ繰り下げ受給を検討することが賢明でしょう。
また、住宅ローンがまだ残っている場合や、住み替えを検討している場合は、現金で返済するのか、リースバックを活用するのかなど、複数の選択肢を理解しておく必要があります。老後資金を守るためには、無理のない範囲での資産管理が欠かせません。
長期視点で考えるライフプラン
現代は「人生100年時代」と言われるようになり、これまでの常識では考えられなかった長い人生設計が必要になっています。従来であれば、60歳前後で定年退職し、その後20年ほどを老後の生活として考えることが一般的でした。しかし、現代では平均寿命が大幅に延び、厚生労働省の統計によると女性が90歳まで生きる確率は50%を超えています。さらに、男性でも85歳を超える長寿が当たり前となりつつあります。つまり、多くの人にとって、60代以降の人生は30年以上続く可能性が高いのです。
これだけ長い人生を見据えると、老後資金の確保はもはや20年分の生活費では不十分です。例えば、退職後に毎月20万円の生活費が必要だと仮定すると、30年間では合計7200万円もの資金が必要になります。この金額は年金だけでは到底カバーしきれないため、現役時代から計画的な資産形成が不可欠です。また、退職金や貯蓄を切り崩すだけでは、予想外の支出やインフレによる物価上昇にも対応できなくなります。
さらに、長寿化によって健康寿命と実際の寿命とのギャップも考慮しなければなりません。医療技術の進歩によって寿命は延びていますが、その分、病気や介護が必要な期間も長くなる傾向があります。介護費用や医療費は老後の大きな負担となり、平均的な介護費用は1人当たり500万円から1000万円程度かかるとも言われています。こうした支出は予想しづらいため、ライフプランの中で「備え」として組み込んでおくことが重要です。
また、人生は予定通りにはいかないものです。例えば、健康で働き続けるつもりだったのに病気や怪我で働けなくなることもあります。結婚や出産、子供の教育費、離婚、転職など、ライフイベントによって経済状況は大きく変わります。
予想外の出来事に柔軟に対応できるよう、ライフプランは「一度立てて終わり」ではなく、定期的に見直し、現状に合わせてアップデートすることが欠かせません。
例えば、30代で立てたライフプランと60代の現状では、必要なお金や生活の優先順位も大きく異なります。30代は住宅購入や子供の教育資金が中心となりますが、60代では退職後の資産取り崩しや医療費、介護費用が大きな課題となります。ライフステージごとに変化する収入や支出をしっかり把握し、その都度計画を調整していくことが、長期的な安定につながります。
また、老後資金を確保する上で重要なのが、投資とリスク管理です。預金だけでは金利が低いため、長期的な資産形成には積立NISAやiDeCoなどの投資商品を活用するのが効果的です。これらは長期・分散投資を前提としており、経済状況の変化にも比較的強く、複利の力を活用することで大きなリターンが期待できます。例えば、40年間積み立て投資を続ければ、毎月数万円の投資でも数千万円の資産形成が可能です。早めにスタートするほど有利になるため、若いうちから取り組むことが大切です。
一方で、投資にはリスクも伴うため、無理のない範囲で行い、万が一のためのリスクヘッジも忘れてはいけません。公的な社会保険制度を理解し、必要に応じて民間保険で補うことで、病気や介護といったリスクにも対応できます。
最終的に、人生100年時代において大切なのは「お金を守りながら増やすこと」と「柔軟に計画を見直すこと」です。資産形成のための投資、リスク管理のための保険、そして定期的なライフプランの見直しを組み合わせることで、長い人生を安心して豊かに過ごすことができるでしょう。
人生は計画通りにはいきませんが、計画そのものを持つことで「いざ」という時に柔軟に対応できる力が養われます。時代の変化に対応しながら、自分らしい人生を実現するためにも、長期的な視点でライフプランを考え、行動することが今後ますます重要になるのです。
まとめ
お金の知識がない人は、知らず知らずのうちに損をし、他人に利用されてしまいます。20代では積極的に投資と自己投資を行い、資産形成の基礎を築くことが大切です。60代では、老後の生活を見据えた出口戦略や年金の受け取り方を考える必要があります。
さらに、社会保険の制度を理解し、必要以上の保険に加入しないことも重要です。学資保険や手数料の高い金融商品を盲信するのではなく、積立NISAやiDeCoなど賢い投資法を活用しましょう。
人生100年時代、ライフプランは柔軟に見直し、長期的な視点で計画を立てることが求められます。情報弱者にならないためには、正しい知識を身につけ、冷静に判断する力を養うことが何よりも大切です。
お金は人生を豊かにするための「ツール」です。それ自体を目的にするのではなく、いかに上手に活用するかが重要です。正しい知識を手に入れて、豊かで幸せな人生を手に入れましょう。
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